日本では梅雨の時期に白い十字形の花を咲かせ、独特の青臭さで知られるどくだみ。実はこの植物、ミャンマーを含む東南アジア・東アジアの広い地域が原産地で、東南アジアでは「フィッシュミント」や「魚腥草(ぎょせいそう)」と呼ばれています。特にシャン州などの山間部でよく食べられている身近なハーブで、生のまま料理に加えたり、麺料理の付け合わせにしたりと、日常の食卓に根づいています。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日本語名 | どくだみ |
| ビルマ語名 | ングァーニーユェッ(ငါးညှီရွက်) |
| シャン語名 | ナークーピン(Na-ku-pin) |
| 英語名 | Fish Mint / Fish Wort / Fish Plant |
| 学名 | Houttuynia cordata |
| 発音のポイント | ငါး(ングァー)=魚、ညှီ(ニー)=生臭い、ရွက်(ユェッ)=葉。直訳すると「魚臭い葉」で、香りをそのまま名前にした言葉 |
| 科・分類 | ドクダミ科ドクダミ属 |
産地・特徴
どくだみはミャンマーを含む、ネパール・ブータン・インド・中国南部・タイ・ベトナム・インドネシア・日本・韓国など広域に自生する植物です。(参考:https://www.inaturalist.org/taxa/157642-Houttuynia-cordata)
葉はハート形で独特の青臭さがあり、この匂いが英語名「フィッシュミント(魚のミント)」の由来です。地上部(葉・茎)だけでなく、地下の白い根も食材として使われます。ミャンマーでは特にカチン州などの山岳地域で薬用植物として記録されており、現地研究者による調査でもカチン州で最も利用される薬草のひとつとして挙げられています。(参考:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27169181/)
ミャンマーの民間療法では、新鮮な葉を1日7枚食べたり、煮出した汁を朝晩飲んだり、フルーツジュースに混ぜたりする習慣があります。葉15〜30グラムを水3カップで煮出して飲むと、呼吸器系のトラブル・咳・肺炎の緩和や、肺からの膿の排出に役立つとされています。生のまま食べれば風邪・発熱・インフルエンザの予防に、煮出した汁は血液や皮膚のかゆみにも使われます。肺疾患・尿路感染症・潰瘍・気管支炎・腸炎・中耳炎など幅広い症状への効果が伝えられており、高齢者の体力増強にもよいとされています。食材としてだけでなく、生活に根ざした薬草として今も重宝されている植物です。
ミャンマーでの食べ方
1. サラダ(トーク)に ― シャン州「ナークーピン」
シャン州ではどくだみを「ナークーピン(Na-ku-pin)」と呼び、サラダや生ハーブの付け合わせとして幅広く使われています。ミャンマーの定番料理のひとつ、野菜の和え物「トウッ(Thoke)」にも登場し、砕いたピーナッツ・玉ねぎ・魚醤と合わせてさっと和えたシンプルなスタイルが基本です。葉の青みとナッツの旨みがよく合います。
2. 麺料理・カレーの付け合わせとして
濃厚なカレーや麺料理には、生のフィッシュミントの葉をそのまま添えて一緒に食べるスタイルが一般的です。強い香りが料理全体のバランスを取り、口の中をさっぱりとさせてくれます。
3. 牛の内臓麺のタレに ― カチン州の「シャピェー」
カチン州には「シャピェー」という、牛の内臓と麺を合わせた料理があります。このシャピェーのタレにどくだみが使われており、香草の青みがクセのある内臓の風味をうまく受け止める役割を果たしています。カチン州が薬草としてどくだみを重用してきたことと、料理への利用が自然につながっています。
4. ムーカタのタレに ― 北シャン州の食卓から
北シャン州出身の方が営むムーカタ(タイ・ミャンマー式のしゃぶしゃぶ&焼き肉)のお店では、つけダレにどくだみの根が少量加えられています。根は葉に比べてクセが少なく、タレに深みとほのかな香りを加えるアクセントとして機能します。北シャン州はタイ・ラオスと国境を接するエリアで、どくだみの根をタレや調味に使う食文化が隣接地域と共有されていることがわかります。
5. 隣接する民族の食文化から ― マニプール州のシンジュ
ミャンマーのチン州・サガイン管区と国境を接するインド・マニプール州では、どくだみ(現地名:トニンコック)を使った生野菜サラダ「シンジュ(Singju)」が有名です。細かく刻んだどくだみの葉と根に、発酵魚(ンガリ)・炒りゴマ・唐辛子・豆粉を合わせた一品で、民族的・文化的にミャンマーのチン族と関連が深い料理です。(参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Singju)
日本での入手方法
どくだみは日本全国で野生のものが手に入るほか、乾燥葉のどくだみ茶は薬局やスーパーで広く売られています。生葉はアジア系スーパーや一部の野菜直売所で見つかることがあります。高田馬場周辺のミャンマー・タイ食材店(MM-MARTなど)でも生のフィッシュミントが入手できることがあります。
まとめ
シャン州のサラダや麺料理の付け合わせ、カチン州のシャピェーのタレ、北シャン州のムーカタのたれ——ミャンマーの中でも地域によって異なる顔を見せるのが、フィッシュミントの面白いところです。日本では「においが強い雑草」と敬遠されがちですが、実はこんなにも多彩な食の文化を持つ植物。ラペ子は、シャピェーのフィッシュミント入りタレをいつか現地で味わってみたいと思っています。


