小さなビー玉くらいの緑の実がぎっしりと房になっている――これが「スズメナスビ」です。日本ではほとんど見かけませんが、ミャンマーでは各地の市場に並び、野山にも自生しているポピュラーな食材のひとつです。独特の苦みが特徴で、その苦みをどう受け止めるかは地域や民族によって大きく異なります。
基本情報
- 日本語名: スズメナスビ
- ビルマ語名: ミョービェットカヤン
- 英語名: Pea eggplant / Turkey berry
- 発音のポイント: 「カヤン」はビルマ語でナスを意味する「カヤンディー(Khayan Thee)」の語幹です
- 科・分類: ナス科ナス属(Solanum torvum)
産地・特徴
直径1〜2cmほどの丸い実が房状に実り、未熟なうちは鮮やかな緑色、熟すと赤くなります。種が多く、噛むと独特の苦みが広がるのが特徴です。日本でなじみ深い大ぶりのナスとは見た目も味もまったく異なります。
ミャンマーでは南部シャン州・カレン州・ラカイン州などで食用利用が確認されており、民族・地域によって呼び名が異なります。南部シャン州ではシャン族が「カヤンカゾッ(Kha-yan-ka-zot)」と呼び、カレン族は「タカウカタ(Ta Kaw Ka Tha)」という名で代々受け継いできた伝統的な食材です。ラカイン地方では「カランセートケーディー(Ka Ran Sate Kay Thi)」という固有の呼び方も記録されています。
一方、中央ミャンマーでは苦みの強さや毒性への懸念から、茹でこぼし・長時間の煮込み・塩漬けなどの下処理が伝承されています。同じ食材でも、地域によってまったく異なる向き合い方が残っている点が興味深いです。


ミャンマーでの食べ方
生で食べる
南部シャン州では採集した実をそのまま生で食べることが確認されています。苦みをそのまま楽しむ食べ方で、現地の人々にはなじみ深い味です。
野菜料理として
シャン族の食卓では、野菜料理の具材として前処理なしに調理されることが多いとされています。カレン族にとっては食用だけでなく、発熱時などの民間薬として使われてきた歴史もある、生活に根ざした植物です。
日本での入手方法
スズメナスビは日本国内ではほとんど流通していません。高田馬場周辺のミャンマー食材店でも常時見かけるものではなく、タイ食材を扱うアジア系スーパーで取り扱いがある場合があります。
まとめ
スズメナスビはミャンマーの多民族文化を体現する食材のひとつです。シャン族・カレン族・ラカイン地方の人々がそれぞれ独自の名前と使い方でこの実を受け継いできたことは、ミャンマーの食の多様性をよく示しています。中央ミャンマーとの向き合い方の違いも含め、地域の食文化を映し出す野菜といえます。


