ミャンマーの食卓を彩る魚介の種類
こんにちは、鈴木ラペ子です。私がミャンマー料理を探求する中で、いつも感動するのが魚介類の豊かさと、その使われ方の多様性です。主食のお米に負けないくらい、ミャンマーの人々の食と健康を支える大切な存在なんですよ。
ミャンマーにはエーヤワディー川のような大河も、美しい海岸線もあります。そこで獲れる淡水魚、海水魚、エビやカニ。地域によって主役が変わるのも、私が面白いと感じる点です。内陸では川の幸、海沿いでは海の幸が食卓を彩ります。
そして、どこでもその恵みを分かち合えるように生まれたのがンガピや干物などの保存食。これもまた、ミャンマー食文化の知恵のひとつです。
ここからは、ミャンマーの代表的な食用魚介類を、淡水魚・海水魚・その他の魚介類に分けて紹介します。
ミャンマーの主な食用淡水魚
伝統的に海水魚よりも好まれてきた淡水魚は、特に内陸部においてミャンマーの人々の食生活を支える重要な存在です。河川、湖沼、雨季に出現する氾濫原など、多様な環境から漁獲され、さまざまな調理法で食されています。養殖も盛んに行われています。
ローフ
ビルマ語発音:Nga Myit Chin / Nga Gyin Ni
ビルマ語:ငါးမြစ်ချင်း / ငါးကြင်းနီ
英語名:Rohu
学名:Labeo rohita
主な料理用途:カレー、養殖重要種
ミャンマーの河川に自生し、養殖も盛んに行われている重要種です。カレーなどで食され、東京のハラール食材店でも購入できることがあります。切り身やすり身でも売られています。
ローフー
ムリガル
ビルマ語発音:Nga-gyin / Nga-chin
ビルマ語:ငါးချင်း
英語名:Mrigal Carp
主な料理用途:ヒン、揚げ物
東南アジアでも食用として愛されている、白コイとしても知られる鯉です。とあるミャンマー料理店では「ルヒ」と訳されていました。
Nga gyin(白コイ)
カトラ
ビルマ語発音:Nga Thaing / Nga Thaing Gyay Khon
ビルマ語:ငါးသိုင်း / ငသိုင်းကြေးခွံ
英語名:Catla
学名:Catla catla
主な料理用途:食用、養殖重要種
ローフと並ぶ主要なコイ科の養殖魚種です。
カローの市場で撮影したカトラ
ヒルサ
ビルマ語発音:Nga Thalauk
ビルマ語:ငါးသလောက်
英語名:Hilsa Shad
学名:Tenualosa ilisha
主な料理用途:揚げ物、酸味のあるカレー、蒸し物、燻製、魚卵
海や汽水域で生活し、産卵のために河川を遡上する魚です。特に魚卵は珍重され、高級食材として扱われます。
Nga Tha Lauk(ヒルサ)
ストライプドスネークヘッド
ビルマ語発音:Nga-yan
ビルマ語:ငါးရံ့
英語名:Striped Snakehead
主な料理用途:ヒン、焼き物、干物、モヒンガーの出汁
雷魚の仲間です。Nga Yan は一般的に Striped Snakehead を指すことが多く、空気呼吸が可能で、カレーや干物として広く食されています。バングラデシュ、インド、インドネシア、タイなどでも食べられている魚です。
ヤンゴンのシティマートにて撮影した雷魚(ライギョ)Nga Yan
クライミングパーチ
ビルマ語発音:Nga Bye Ma
ビルマ語:ငါးပြေမ
英語名:Climbing Perch
学名:Anabas testudineus
主な料理用途:一般的な食用魚、ンガピ・イェー原料
空気呼吸ができ、非常に生命力が強い魚です。さまざまな淡水環境に生息する一般的な食用魚で、発酵調味料ンガピ・イェーの原料としても使われます。
タウナギ
ビルマ語発音:Nga Shint
ビルマ語:ငါးရှဉ့်
英語名:Asian Swamp Eel
学名:Monopterus albus
主な料理用途:重要な食用魚、養殖、加熱調理必須
ウナギ型の魚で、鱗がありません。水田や沼地などの泥底を好み、空気呼吸が可能です。ミャンマーを含む東南アジアで重要な食用魚であり、水田での養殖も行われます。寄生虫のリスクがあるため、生食は避け、十分に加熱調理する必要があります。
ちなみに、日本と同じうなぎを指すのは「ンガリンバン」(Nga Lin Ban)なんだそうです。
カローの市場で見かけたタウナギ(ンガシーン)
パンガシウス
ビルマ語発音:Nga Dan
ビルマ語:ငါးဒန်
英語名:Iridescent Shark / Swai / Basa
学名:Pangasianodon hypophthalmus
主な料理用途:食用、養殖、白身で淡白
イリデセントシャークを含むナマズの仲間です。東南アジア原産で、ミャンマーには食用として導入されたとされます。ベトナムやタイで大規模に養殖され、Swai、Basa、Panga などの名称で国際的に流通しています。
カローの市場にて。これはンガタン(パンガシウス)
ブロンズフェザーバック
ビルマ語発音:Nga Phe
ビルマ語:ငါးဖယ်
英語名:Bronze Featherback
学名:Notopterus notopterus
主な料理用途:ンガチン原料、すり身
和名に「ナマズ」が入っていますがナマズではなく、アロワナに近い仲間の古代魚だそうです。体が平たくナイフのようであることから、「ナイフフィッシュ」「フェザーバック」という英名があり、ミャンマーやタイなどの東南アジアではすり身の状態で売られています。
この本物の美味しいすり身は「ガペーチッ」と呼ばれると言っていました。
カローの市場で見たンガペーチッと呼ばれていた魚

魚のすり身を皮から削いでいる様子
ナマズ類
ビルマ語発音:Nga Khu
ビルマ語:ငါးခူ
英語名:Catfish
学名:Clarias spp.
主な料理用途:モヒンガーの出汁、ヒン、焼き物、燻製
ミャンマーではナマズ目の魚が多く食べられています。一般的なナマズを指すのは「ガクー」と呼ばれています。
Nga Ku(キャットフィッシュ)

Nga Min(Proeutropiichthys taakree)
ワラゴ・アトゥー
ビルマ語発音:Nga-bat
ビルマ語:ငါးပတ်
英語名:Sheatfish / Freshwater Shark
学名:Wallago attu
主な料理用途:ヒン、揚げ物
別名「ヘリコプターナマズ」。南アジアおよび東南アジア原産の淡水ナマズで、古くから東南アジアの食糧として利用されてきた魚種の一つだそうです。
Nga Bat(ワラゴナマズ)
ティラピア
ビルマ語発音:Nga-tilapia
ビルマ語:ငါးတလားပြား
英語名:Tilapia
世界各国で食べられているティラピア。食用のための養殖も盛んです。隣国タイではプラーニンと呼ばれていますが、ミャンマーでは「タラビアー」と呼ばれているそうです。東京のハラール食材店でも購入できます。
ヤンゴンのシティマートで撮影したフレッシュティラピア(ティラビア)
ミャンマーの主な食用海水魚
長い海岸線を持つミャンマーでは、多種多様な海水魚が漁獲され、特に沿岸地域の人々の食生活に欠かせません。近年は冷凍・輸送技術の発達により、内陸部の大都市などでも消費されるようになっています。
パラダイス・スレッドフィン
ビルマ語発音:Nga Ka Ku Yan / Nga Ku / Ngwe-daung
ビルマ語:ငါးကကူရံ / ငါးကူ / ငွေတောင်
英語名:Paradise Threadfin
学名:Polynemus paradiseus
主な料理用途:カレー、揚げ物、干物
ハラール食材店でも「タポシ」として売られていました。
ジャイアントシーバス
ビルマ語発音:Kakatit
ビルマ語:ကကတစ်
英語名:Giant Seabass / Barramundi
学名:Lates calcarifer
主な料理用途:高級食用魚、蒸し物、カレー
マナガツオ類
ビルマ語発音:Nga Mot Phyu / Nga Mot Chaung / Nga Mot Net
ビルマ語:ငါးမုတ်ဖြူ / ငါးမုတ်ချောင်း / ငါးမုတ်နက်
英語名:White Pomfret / Chinese Pomfret / Black Pomfret
学名:Pampus argenteus / Parastromateus niger
主な料理用途:高級食用魚、蒸し物、揚げ物、カレー
インドグルクマ
ビルマ語発音:Nga Ponnar / Ocooot:
ビルマ語:ငါးပုဏ္ဏား
英語名:Indian Mackerel
学名:Rastrelliger kanagurta
主な料理用途:カレー、揚げ物、干物
Mackerel というとサバと勘違いしそうですが、スパニッシュ・マカレルはサワラのことなんだそうです。スペインサバは、体全体に黄色またはオリーブ色の楕円形の斑点があるそうです。
ヨコシマサワラ
ビルマ語発音:Nga Khone Nyo / Cl:og«:^o
ビルマ語:ငါးခုန်းညို
英語名:Narrow-barred Spanish Mackerel
学名:Scomberomorus commerson
主な料理用途:食用、カレー、揚げ物
アナゴ類
ビルマ語発音:Nga Shwe
ビルマ語:ငါးရွှေ
英語名:Conger Eel
学名:Congresox talabon / talabonoides
主な料理用途:ラカイン・モンティーの具材
ミャンマーの魚(ンガシュエ)
フエダイ類
ビルマ語発音:Nga Pa Ni / Cl:ol:|
ビルマ語:ငါးပါးနီ
英語名:Snapper
学名:Lutjanus spp.
主な料理用途:カレー、焼き物、蒸し物
フエダイでしょうか?
ハタ類
ビルマ語発音:Kyauk Nga / NjocScI:
ビルマ語:ကျောက်ငါး
英語名:Grouper
学名:Epinephelus spp.
主な料理用途:高級食用魚、蒸し物、スープ、カレー
フォーフィンガースレッドフィン
ビルマ語発音:Nga Kunn Yon / Csooo
ビルマ語:ငါးကွန်းရုံ
英語名:Fourfinger Threadfin
学名:Eleutheronema tetradactylum
主な料理用途:食用、カレー、揚げ物
ブロッチドタイガートゥースドクローカー
ビルマ語発音:Nga Pote Thin / ^cooogcdS
ビルマ語:ငါးပုတ်သင်
英語名:Blotched Tiger-toothed Croaker
学名:Otolithoides biauritus
主な料理用途:食用、干物
ニベ・グチ類
ビルマ語発音:Nga Pote Thin / Nga Pye
ビルマ語:ငါးပုတ်သင် / ငါးပြေ
英語名:Croaker
学名:Johnius spp. / Pennahia spp.
主な料理用途:食用、干物、練り製品
ジャイアントキャットフィッシュ
ビルマ語発音:Nga Shwe / COTOoS
ビルマ語:ငါးရွှေ
英語名:Giant Catfish
学名:Arius thalassinus
主な料理用途:食用、カレー
ボンベイダック
ビルマ語発音:Ar Pe / Ooojsi
ビルマ語:အာပဲ့
英語名:Bombay Duck
学名:Harpadon nehereus
主な料理用途:干物
コシナガマグロ
ビルマ語発音:Nga Oh Phalar / C1:o^:co^:
ビルマ語:ငါးအိုးဖလား
英語名:Longtail Tuna
学名:Thunnus tonggol
主な料理用途:食用、缶詰
サッパ・ニシン類
ビルマ語発音:Nga-kone-nyo
ビルマ語:ငါးကုန်းညို
英語名:Sardinellas / Herrings
主な料理用途:ヒン、揚げ物、干物、缶詰、ンガピの原料
ミャンマーの市場で見つけた不明魚(4)
カタクチイワシ類
ビルマ語発音:Nga-pyat / Nga Ni Tu
ビルマ語:ငါးပြတ်
英語名:Anchovies
主な料理用途:ンガピ、魚醤、干物
いわゆるカタクチイワシ、アンチョビ全般を、Nga Ni Tu(ンガニッ)と呼ぶそうです。
Nga Ni Tu
シルバーバーブ
ビルマ語発音:Nga-khone-ma-gyi
ビルマ語:ငါးခုံးမကြီး
英語名:Silver Barb
主な料理用途は、ヒンや揚げ物です。
タチウオ
ビルマ語発音:Nga-ta-khun
ビルマ語:ငါးတံခွန်
英語名:Ribbonfish
主な料理用途は、揚げ物、干物、スープです。
アジ類
ビルマ語発音:Nga-pan-sin / Nga-myin
ビルマ語:ငါးပန်းစင်、ငါးမြင်း
英語名:Scads / Trevallies
主な料理用途は、ヒン、揚げ物、焼き物、干物です。
ヒイラギ類
ビルマ語発音:Nga-kat-tit / Nga-din-gar
ビルマ語:ငါးကပ်တစ်
英語名:Ponyfishes
主な料理用途は、ヒン、揚げ物、干物です。
注:ミャンマー語の名称やローマ字表記は、地域や文献により異なる場合があります。
その他の主な食用魚介類
魚類以外にも、エビ、カニ、貝、イカ・タコなどが、ミャンマーの食文化において重要な役割を果たしています。特にエビやカニは、国内消費だけでなく、重要な輸出品目ともなっています。
エビ・テナガエビ類
ビルマ語発音:Pazun
ビルマ語:ပုစွန်
英語名:Shrimps / Prawns
主な料理用途は、ヒン、トウッ、揚げ物、干しエビ、エビのンガピなどです。
カローの市場で見た小エビ(バズン)
ノコギリガザミ
ビルマ語発音:Ganan
ビルマ語:ကနန်း
英語名:Mud Crab
主な料理用途は、カレー、蒸し物、揚げ物、スープです。
ワタリガニ類
ビルマ語発音:Ganan
ビルマ語:ကနန်း
英語名:Swimming Crabs
主な料理用途は、カレー、蒸し物、揚げ物、スープです。
イカ・コウイカ類
ビルマ語発音:Pyi-kyi-nga
ビルマ語:ပြည်ကြီးငါး
英語名:Squid / Cuttlefish
主な料理用途は、トウッ、揚げ物、焼き物、ヒンです。
二枚貝類
ビルマ語発音:Shin-byu / Ka-mar
ビルマ語:ရှပ်ပြာ、ကမာ
英語名:Clams / Mussels / Oysters
アサリ、ハマグリ、カキなどの二枚貝類です。主な料理用途は、スープ、炒め物、ヒンなどです。
カローの市場で見かけた剥き貝

カローの市場で見かけたタニシ的な貝類
魚卵
ビルマ語発音:Nga-u
ビルマ語:ငါးဥ
英語名:Fish Roe
主な料理用途は、揚げ物やカレーです。
カローの市場で見た魚卵(ンガウー)
名前確認中の魚たち
地方の市場で見かける魚は、まだ名前が分からないものもたくさんあります。もし写真を見て分かる方がいれば、ぜひ教えていただけると嬉しいです。
ミャンマーの市場で見つけた不明魚(1)

マレーシアの市場で見つけた不明魚(5)
まとめ:ミャンマーの食卓を支える魚介類
ミャンマーで食べられている淡水魚、海水魚、そしてさまざまな魚介類をリストアップしてみました。
北から南へ、そして大河から海へと広がる多様な自然環境が、豊かな水の恵みをもたらしています。カレー(ヒン)やスープの出汁、和え物(トウッ)、揚げ物(アチョー)、そしてミャンマー料理に欠かせないンガピや干物まで、さまざまな形で食卓に登場します。
私自身もまだまだ勉強中で、特に地方の市場で見かける魚は名前が分からないものもたくさんあります。このリストが、ミャンマー料理を食べるとき、作るとき、現地の市場を訪れるときの参考になれば嬉しいです。
